万年筆にまつわるエトセトラ2−インク行脚

 そんなわけで、使い始めたのだが、万年筆はなんというか奥が深い。なにかと手がかかる。まあ、それがかえっていいわけだが(笑)。
 まず最初の手間は、インクが紙の裏までにじんでしまう「裏写り」だった。
 インクの色に関しては、僕はインクにいわゆるブルーブラックという色を使うのが好みだ。しかしどうやらブルーブラックはインクの性質が若干難しいものが多いらしい。また同じブルーブラックといっても各社で相当色合いが違う。
 僕はシステム手帳のリフィルとしてアシュフォードというブランドのものを使っている。紙の白さと書き味が他のものより好みだ。当然、万年筆でもっとも書き込むことになるわけだが、はじめてこの紙に書いてみた時、裏写りがけっこうあったのだった。システム手帳用と言うことで紙が薄手なのも影響しているらしい。また、最近人気のモールスキンというノート(というか手帳というか)も使い始めたのだが、これも裏写りしやすい紙として有名だ。しかし、この裏写りのしやすさは紙だけでなくインクによっても相当違うらしい。僕がその時使っていたパイロットのBBは裏写りしやすいもののようだった。また同じペンを使っても、ペン先からのインクの出具合(フローというらしい)が全然違うこともわかってきた。
 つまり、フロー・色合い・裏写りと3つの視点でインクを評価する必要があるわけだ(実はもう一つ問題があるのだが、これについては後日)。ここで僕のインク行脚が始まった。以下、おおむね使ってみた順に感想を書いてみる。なお、本来はペンとインクは同じメーカーのものを使うのが基本とされているので、僕のようにあれこれ入れ替えるのは、自己責任でということになっている。
ウォーターマン:色合いはBBにしては青が強く明るめだが、その加減は僕の好み。フローは普通。しかし裏写りが少し発生する。
パイロット:色合いは濃いめ。フローはすごく良く、書いていて気持ちがいい。しかし裏写りが盛大に発生する。評価は高いインクらしいが、僕が使う紙の上ではとても使い物にならない。
モンブラン:色合いは標準的。裏写りしない。しかしフローが渋い…。しばらく書いていると色が薄く、線が細く、ペンの引っかかりがざらざらとしてくるようになる。どうやら一般的な評価としてもモンブランのBBは「扱いが難しい」とされているようだ。これはきっと僕がF(細字)のペン先で使っていることも関係していて、本来は太いペン先に向いたインクなのではないかと思う。
ラミー:色合いは濃いめ。フローは標準的より若干渋めか。裏写りしない。万年筆のブランドとしては比較的マイナーなのだけど、根強いファンがいるらしいのは使ってみてわかった。
プラチナ:色合いは明るめというか、明るい。これは僕の感覚では「ブルー」だ。フローは標準より良い。そして裏写りもしない。価格が安いのもいい。
セーラー:色合い・フローは標準的。しかし裏写りする。
 ざっとこれだけ使ってみて、ずいぶんと差があるなあと実感した。で、肝心の「どのインクを使うか」という問題だが、裏写りだけは絶対困るので、ラミーかプラチナかということになる。ただしプラチナは明るすぎて好みではない。そこでまずはラミーをキャップレスに入れて使うこととした。
(続く)