万年筆フリークの通説とは違うけど

 万年筆を使うようになっておよそ3年。自分の好みもある程度わかってきた気がする。同時に、フリークの間で通説のように言われていることが、個人には必ずしも当てはまらないこともわかってきた。

1.やはり細字がいい。

「ヌラヌラした書き味」を味わうには太字が有利ということもあって、万年筆が好きになると太字を好むようになってくるという。
 まあ、たしかに感覚が変わったとは思う。ゲルインクボールペンでいう0.5mm幅が標準だったものが、今では0.7mm〜1.0mm幅くらいでも十分細字の範疇に感じる。でも、そこまでだ。仕事で普通に使う場合にはせいぜい細字(F)・中字(M)までで、太字〜極太(B、BB、3B)なんてペン先を必要とするのは郵便物の宛名書きくらいなものだ。やはり使う頻度が高い道具にこそ、愛着も湧くのではないだろうか。
 書き味の点に関しても、細字はカリカリ感が出やすいだけに、むしろ調整されたペン先の書き味の良さを実感できるように思う。

2.ペン先は柔らかくなくてもいい。

「よく撓る(しなる)」とか「フワフワな柔らかさ」のペン先がいいというが、僕にはそうは感じられない。むしろ柔らかいペン先ではうまく書くことができず、ストレスすら感じる。ただでさえ悪筆なのに(苦笑)。毛筆の時代ならともかく、鉛筆やボールペンなど柔らかさと無縁の筆記具で育った人間には、柔らかい筆記具を使いこなすのには技術を習得する必要があるのだろう。しかし、趣味で書いている時間ならともかく、仕事の最中には筆記動作に神経をまわす余裕はない。滑らかでさえあれば、固いペン先の方がむしろ使いやすく感じる。
 そもそも、ネット上の議論を見ていると、ペン先の「柔らかさ」と「滑らかさ」が混同されていることも多い。よく調整されたペン先なら、滑らかさが十分に書き味を楽しませてくれると思う。相対的に柔らかいペン先を持つというヴィンテージ万年筆を珍重する人もいるが、メンテナンスの面倒さなども考えると、それほどありがたい物ではないというのが僕の正直な感想だ。

つまり

 僕は、装飾品や思い入れの対象としてではなく、実用品としての万年筆が好きだということかもしれない。